回天訓練基地跡地 - 周南市, 山口県

七面鳥放浪記

国内に四か所あった「人間魚雷」回天の訓練基地のうち最初のもので、現存する最大の遺構となります。戦前・戦中の馬島港周辺はまるごと海軍の施設で、そこから昏い隧道を通り抜けると先に白亜の回廊と建物があらわれます。良く晴れた日であれば海の青、空の青との対照が純粋に美しく、土木遺産に指定されているのもうなずけます。
ただ、ここで訓練した若者の多くが不帰の征途に就いたことは忘れるべきではありません。
回天の航続距離はわずかに二〇キロほどで、母艦となる伊号潜水艦に搭載された状態で出撃し、発射された後は搭乗員が目視確認しつつ敵艦艇に肉迫します。成功すれば戦死、失敗してもやり直しはできずそのまま戦死、母艦ごと沈められても戦死です。信頼性は低く安全性は端から考慮されておらず、訓練中の事故も多発しました。一定の戦果はあったものの戦局を覆すほどではなく、戦死者の方々が生きながらえて成しえたことを思えば、あまりに大きな犠牲でした。

離島ながらもアクセスは意外とよく、広島駅から徳山駅までは新幹線で二駅、徳山駅から徳山港までは歩いてすぐ、徳山港から馬島港は小一時間、馬島港から訓練基地跡地までは一〇分ほどです。広島の原爆ドームと原爆資料館、呉の大和ミュージアムと帝国海軍史跡、大久野島（うさぎと毒ガスの島）なども訪れれば、先の大戦についての理解と実感が深まります。二〇二三年五月現在、老朽化のため訓練基地跡地への立入は禁止されていて、海岸から眺めるだけとなっています。早期の改善が望まれるものの、現状でも十分な見ごたえではあります。

T M.

回天運用時の雰囲気を色濃く残す訓練基地の遺構。
トンネルを抜けると一気に当時に戻ったような雰囲気を残す遺構と美しい海が目の前に現れます。
日本でも数カ所ある訓練所のうち最初に完成した訓練所でした。訓練自体は終戦の日まで続けられたようです。
訓練を受けた多くの若者が戻って来ませんでした。我々はその事を心に刻み忘れてはいけないと改めて痛感しました。

アキーラ海外見聞録AKIRA-Travel-Channel

【山口県周南市‐大津島(回天の島)回天訓練基地跡と回天運搬用トンネル】
大津島の港から近い場所に
長さ約250ｍ、高さはおよそ4ｍ、路面以外は当時のままの状態で残されている回天運搬用トンネルがあります。

トンネルを出たところに
回天訓練基地跡（酸素魚雷発射試験場跡）があります。

元々は、九三式酸素魚雷の発射試験場として造られたもので、呉市の海軍工廠水雷部において製作された魚雷を海上運搬してここから発射し、その性能を鬣山（たてがみやま）山頂付近の魚雷見張所において確認するものでした。

先の大戦末期
19年9月以降は回天の訓練基地として使用され、魚雷発射口とは逆の位置に設置してあったクレーンで「回天」を吊り上げ、その横の海面に降ろし、基地の沖合いに設置されていたブイまで、横抱艇により曳航し、その場所から熟練度により3コースを使って訓練が行われていました。

※NikonのフラッグシップミラーレスカメラZ9で撮影
使用レンズはF2.8　24‐70㎜の広角ズームレンズ

藤田剛

戦時中の建物とは思えないくらい、きれいに残っています。
過酷な訓練中に亡くなった方も多いと学びました。
このような歴史を知ってもらうことが大切だと思います。

Sacred G.

7月の中頃、かなり暑い時期に訪れました。

朽ちていく感じが原爆ドームにも通じており、蝉が鳴く暑い中を歩ていると、終戦のころを想起させられて、もの悲しい思いがこみ上げました。

373 T.

回天運搬用トンネルの中程に海岸に出ることが出来る横穴的通路があるので、(ちょっと足場は悪いですが)横から撮りたい人はこの場所からがいいかもしれません。
なお、回天訓練基地跡はフェンスで保護されているので、立ち入ったり登ったりはできません。

KatoShiki

訓練の跡地、整備工場からトンネルを抜けてやってきた回天をここでここで釣り上げて海まで入れていたようです。

回天は基本、静止中に潜望鏡から覗けるだけで、動いている途中は　全く周辺が見えなかったようです。手に持っている時計だけを頼りに方向転換していたと言います。

この案内板を見ると大津島周辺のどの海域のルートを使用して訓練していたのかがわかります。

ふじさん

回天記念館の後に訪問をおすすめします。
暑い外気温度との差にビックリするほど快適な空間。
天井が高く、説明のアナウンスが響きわたり、当時どのような気持ちでこの空間を通ったのか。
暗い通路の先に広がる青い海。光る空。無機質なコンクリートの先に広がる自然に当時の搭乗員は、どのような思いであったか、深く考えさせられました。